
目次
記事の要約
- 住友金属鉱山、NSSOL、日鉄テックスエンジが製錬設備の予知保全システムを構築
- 熟練従業員の暗黙知と測定データを活用し、故障予知を実現
- ニッケル工場と播磨事業所で導入、生産性向上に貢献
住友金属鉱山製錬設備の予知保全システム構築完了
住友金属鉱山株式会社、日鉄ソリューションズ株式会社、日鉄テックスエンジ株式会社は2024年5月15日、住友金属鉱山のニッケル工場(愛媛県新居浜市)と播磨事業所(兵庫県加古郡播磨町)の製錬設備向け予知保全システムを構築したと発表した。このシステムは、熟練従業員の経験や暗黙知、設備の音や振動などの測定データ、過去の異常事象などを基に、故障の初期兆候を可視化し、故障タイミングを予測するモデルを備えているのだ。
システム導入済みの設備の半数以上で成果が出ており、稼働率低下の防止や部品交換頻度の適正化などが期待できる。2023年6月からデータ収集・評価を開始したこのプロジェクトは、3社の知見を結集することで、特性や製造元が異なる複数の設備への横断的な予知保全を実現している。粉砕、溶融/溶解、浸出、浄液、電解など、各工程が連続する製錬事業において、1つの設備の故障が全体の生産性に大きく影響するため、このシステムの導入は大きな効果をもたらすだろう。
住友金属鉱山は2022年度に中期DX施策の一環としてIoTプラットフォーム構想を検討し、ロードマップの策定と検証に着手した。今後は対象設備の拡大や国内外の各工場への導入を進め、安定操業の継続と生産性の向上を目指すとしている。NSSOLは自社開発のIoXプラットフォームと設備状態監視ソリューションを提供し、日鉄テックスエンジは設備保全ノウハウを提供、センサー設置とデータ収集方法を決定した。
各社の役割とシステム概要
担当 | 役割 |
---|---|
住友金属鉱山 | 設備保全作業のとりまとめ、課題整理、熟練保全員の暗黙知提供、センサー設置工事 |
日鉄ソリューションズ | IoXプラットフォーム・設備状態監視システム導入、データ解析、予知保全モデル開発 |
日鉄テックスエンジ | センサー設置個所・台数・収集データの決定、センサー機器選定・調達・導入作業 |
予知保全システムの技術解説
本システムは、IoTを活用した予知保全システムである。様々なセンサーから取得したデータ(振動、音響など)をIoXプラットフォームで一元的に管理し、AIを用いた分析によって設備の故障を予測する。
- センサーデータのリアルタイム監視
- AIによる故障予測モデル
- 異常検知とアラート通知
これにより、予期せぬ設備故障による生産停止リスクを低減し、メンテナンスコストの最適化を実現する。熟練技術者の経験とデータ分析を組み合わせることで、精度の高い予測が可能となるのだ。
予知保全システム導入に関する考察
本システムの導入は、製錬事業における生産性向上に大きく貢献するだろう。熟練技術者の暗黙知をシステム化することで、人材育成や技術伝承にも役立つ。しかし、システムの維持管理には継続的なコストと専門知識が必要となる。データのセキュリティ対策も重要な課題だ。
今後、システムの精度向上や機能拡張が求められるだろう。例えば、故障予測の精度向上、多様な設備への対応、メンテナンス作業の自動化などが考えられる。また、システムの導入効果を最大限に発揮するためには、従業員の教育とトレーニングも不可欠だ。
更なる生産性向上と安定操業の実現のため、システムの継続的な改善と発展に期待したい。データ分析に基づいた最適なメンテナンス戦略の立案、そして、予期せぬ事態への迅速な対応体制の構築が重要となるだろう。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「住友金属鉱山とNSSOL、日鉄テックスエンジ、製錬設備の予知保全システムを構築 | 住友金属鉱山株式会社のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000109821.html, (参照 2025-05-15).