目次
記事の要約
- NTTがインフラ施設の鋼材腐食を高精度に予測する技術を確立
- 撮影画像と環境データから将来の腐食状況を予測
- 点検周期と補修時期の最適化で保全コストを縮減
世界初、NTTが鋼材腐食の進行を高精度に予測する技術を確立
日本電信電話株式会社(NTT)は、デジタルカメラで撮影した道路橋などのインフラ施設の画像から、数年後の鋼材腐食の進行を高精度に予測する技術を確立した。この技術は、実際の撮影画像から将来の腐食の広がりを予測した画像を生成できる世界初の技術であり、腐食が進行した実際の施設の画像と設置環境のデータを学習することで、高精度な予測画像の生成を可能にしている。
道路橋および道路に添架された通信用管路設備を用いた検証の結果、数年後における腐食領域の増加率を平均誤差10%未満(9.9%)の精度で予測できることを確認した。この技術により、数年後の腐食状況を高精度に把握できるため、点検周期や補修工事時期の最適化が可能になり、維持管理業務の抜本的な効率化による保全コストの縮減を実現できる。
NTTは本技術を2025年度中にNTTグループ会社での道路橋を対象に事業化を予定している。また、他の劣化事象(ひび割れ、裂傷等)への技術拡大を進め、持続可能な社会の実現に貢献していく考えだ。
鋼材腐食進行予測技術の詳細
項目 | 詳細 |
---|---|
技術内容 | インフラ施設の画像から数年後の鋼材腐食を予測 |
予測精度 | 腐食領域の増加率を平均誤差10%未満で予測 |
活用データ | 施設の画像、設置環境データ、予測年数 |
事業化予定 | 2025年度中にNTTグループ会社で道路橋を対象 |
技術応用 | 他の鋼構造物や劣化事象への技術拡大を予定 |
敵対的生成ネットワーク(GAN)について
敵対的生成ネットワーク(GAN)とは、深層学習(ニューラルネットワーク)モデルの一つであり、2つのニューラルネットワークをトレーニングして互いに競合させることで、用意したデータセットからより本物に近い疑似的なデータの生成が可能なモデルである。GANは、以下の特徴を持つ。
- 生成モデルと識別モデルの2つのネットワークで構成
- 生成モデルは本物に近いデータを生成
- 識別モデルは生成されたデータが本物か偽物かを識別
NTTが開発した技術では、このGANに経過年数と腐食の増加量に加え、過去と現在の施設画像を活用して腐食の面積・形状・色等の情報を学習させている。さらに、気温や降水量等の化学的に腐食進行に影響すると想定される複数の環境データの中から、最適なパラメータを選び出し、画像と一緒にモデルに入力できる構成としている。
鋼材腐食予測技術に関する考察
NTTが開発した鋼材腐食予測技術は、インフラ施設の維持管理において大きな変革をもたらす可能性を秘めている。従来の一律的な点検周期から、施設ごとの腐食進行状況に応じた最適な点検・補修計画を立てることが可能になり、コスト削減と安全性の向上を両立できるだろう。
しかし、この技術が普及するためには、予測精度のさらなる向上と、多様な環境条件下での検証が不可欠だ。特に塩害地域など、腐食が進行しやすい特殊な環境下でのデータ収集とモデルの改良が重要になるだろう。また、予測結果の解釈や補修計画の策定には専門知識が必要となるため、技術者の育成も重要な課題となる。
今後は、AI技術の進化とデータ蓄積により、予測精度が向上し、より広範なインフラ施設への適用が期待される。さらに、ドローンやIoTセンサーと連携することで、リアルタイムでの腐食状況の把握や、早期の異常検知が可能になるかもしれない。NTTには、これらの技術開発を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してほしい。
参考サイト/関連サイト
- NTT.「世界初、鋼材を使用したインフラ施設の画像から腐食の進行を予測する技術を確立~道路橋等の様々な施設の将来状態を把握し、点検周期と補修時期を最適化することで保全コストを縮減~ | ニュースリリース | NTT」.https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/04/30/250430a.html, (参照 2025-05-02).