
DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)とは
DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)は、主にヨーロッパで普及しているデジタルコードレス電話の規格です。1990年代初頭に開発され、当初はヨーロッパ電気通信標準化機構(ETSI)によって標準化されました。DECTは、家庭用だけでなく、オフィスや産業環境など、さまざまな場所で使用されています。
DECTの主な特徴は、その高いセキュリティと音質です。デジタル技術を使用しているため、アナログ方式に比べて盗聴のリスクが低く、クリアな音声通話が可能です。また、DECTは、比較的混雑の少ない周波数帯を使用しているため、他の無線機器との干渉が少ないという利点もあります。
DECTは、日本国内ではPHS(Personal Handy-phone System)が普及したため、あまり一般的ではありません。しかし、その技術的な優位性から、一部の企業や専門分野では依然として利用されています。近年では、IoT(Internet of Things)デバイスやスマートホーム製品など、新たな応用分野も模索されています。
DECTの技術と応用
「DECTの技術と応用」に関して、以下を解説していきます。
- DECTの通信技術
- DECTの応用事例
DECTの通信技術
DECTは、TDMA(時分割多元接続)という方式を使用して、複数のユーザーが同じ周波数帯を共有できます。この技術により、基地局は複数の端末と同時に通信でき、効率的な周波数利用が可能です。また、DECTは、自動的に最適なチャネルを選択する機能も備えており、電波干渉を最小限に抑えることができます。
DECTの通信範囲は、一般的に屋内では数十メートル、屋外では数百メートル程度です。ただし、建物の構造や周囲の環境によって大きく変動します。また、DECTは、ハンドオーバー機能もサポートしており、通話中に移動しても、自動的に最適な基地局に接続を切り替えることができます。
項目 | 詳細 | 補足 |
---|---|---|
通信方式 | TDMA | 時分割多元接続方式 |
周波数帯 | 1.88-1.90GHz | 欧州標準 |
変調方式 | GFSK | ガウスFSK |
通信速度 | 1.152Mbps | 最大速度 |
DECTの応用事例
DECTは、コードレス電話だけでなく、さまざまな分野で応用されています。例えば、病院や工場などの広い施設内での通信手段として利用されています。また、ワイヤレスマイクやヘッドセットなど、音声通信を必要とする機器にも搭載されています。DECTは、その信頼性とセキュリティの高さから、業務用途に適しています。
近年では、スマートホームやIoTデバイスとの連携も進んでいます。例えば、DECT ULE(Ultra Low Energy)という省電力規格を利用して、センサーやアラームなどのデバイスをワイヤレスで接続できます。これにより、家庭内のセキュリティシステムやエネルギー管理システムを構築できます。
応用分野 | 具体的な製品 | 特徴 |
---|---|---|
医療機関 | ナースコールシステム | 高い信頼性と音声品質 |
工場 | インカム | 騒音環境下でもクリアな通信 |
オフィス | コードレス電話 | 複数回線に対応 |
スマートホーム | センサーネットワーク | 省電力で長寿命 |