
エキスパートシステムとは
エキスパートシステムとは、特定の分野における専門家の知識や経験をコンピュータ上で再現し、高度な問題解決を支援するシステムです。人間が行うような推論や判断を、コンピュータが代替できる点が大きな特徴と言えるでしょう。
このシステムは、医療診断や金融取引、生産管理など、様々な分野で活用されており、専門家の不足を補ったり、業務の効率化を図ったりする上で重要な役割を果たします。エキスパートシステムを導入することで、企業はより迅速かつ正確な意思決定が可能になるでしょう。
近年では、AI技術の発展に伴い、エキスパートシステムの性能も向上しており、より複雑な問題にも対応できるようになっています。そのため、今後ますます多くの分野でエキスパートシステムの活用が期待されるでしょう。
エキスパートシステムの構成要素
「エキスパートシステムの構成要素」に関して、以下を解説していきます。
- 知識ベースの構造
- 推論エンジンの役割
知識ベースの構造
知識ベースは、エキスパートシステムの中核であり、専門家の知識を体系的に整理し、蓄積したものです。この知識ベースには、事実やルール、経験則などが含まれており、推論エンジンが問題解決を行う際に参照する情報源となります。
知識ベースの構築には、知識獲得というプロセスが不可欠であり、専門家へのインタビューや文献調査などを通じて、必要な知識を収集します。収集した知識は、ルールやフレーム、意味ネットワークなどの形式で表現され、コンピュータが理解しやすいように構造化されるのです。
要素 | 内容 | 例 |
---|---|---|
事実 | 既知の情報 | 患者の症状 |
ルール | 知識の表現 | IF~THENルール |
フレーム | 構造化された知識 | 病気の症状と治療 |
意味ネットワーク | 概念間の関係 | 病気と原因の関係 |
推論エンジンの役割
推論エンジンは、知識ベースに蓄積された知識を用いて、与えられた問題に対する解決策を導き出す役割を担います。推論エンジンは、人間の思考プロセスを模倣し、演繹推論や帰納推論などの推論方法を用いて、最適な結論を導き出すのです。
推論エンジンには、前向き推論(データ駆動型推論)と後ろ向き推論(目標駆動型推論)の2つの主要なアプローチが存在します。前向き推論は、既知の事実から結論を導き出すのに対し、後ろ向き推論は、目標とする結論から必要な事実を逆算していくという違いがあります。
推論方式 | 特徴 | 適用例 |
---|---|---|
前向き推論 | 既知の事実から推論 | プラントの異常診断 |
後ろ向き推論 | 目標から必要な事実を逆算 | 医療診断 |
演繹推論 | 一般的なルールから個別事例 | 法律の適用 |
帰納推論 | 個別事例から一般的なルール | データ分析 |