
マルチキャストとは
マルチキャストとは、ネットワークにおけるデータ送信方式の一種です。特定の複数の宛先に対して、効率的にデータを送信する技術を指します。ブロードキャストのようにネットワーク全体に送信するのではなく、必要な宛先だけにデータを送るため、ネットワーク帯域を有効活用できます。
従来のユニキャスト(1対1の通信)やブロードキャスト(1対ネットワーク全体の通信)とは異なり、マルチキャストは1対多の通信を効率的に実現します。特定のグループに属するホストに対してのみデータを送信するため、不要なトラフィックを削減し、ネットワークの負荷を軽減することが可能です。IPマルチキャストは、インターネットプロトコル(IP)ネットワークで広く利用されています。
マルチキャストは、ビデオストリーミングやオンラインゲーム、株価情報配信など、多数のユーザーに同じ情報を同時に配信するアプリケーションで特に有効です。受信者は、マルチキャストグループに参加することで、必要なデータだけを受信できます。これにより、サーバー側の負荷を分散し、効率的なデータ配信を実現します。
マルチキャストの仕組み
「マルチキャストの仕組み」に関して、以下を解説していきます。
- マルチキャストグループ管理
- マルチキャストルーティング
マルチキャストグループ管理
マルチキャストグループ管理は、どのホストがどのマルチキャストグループに参加するかを管理するプロセスです。ホストは、IGMP(Internet Group Management Protocol)などのプロトコルを使用して、ルーターに対してグループへの参加または離脱を通知します。これにより、ルーターはどのインターフェースから特定のマルチキャストグループのトラフィックを転送すべきかを把握できます。
IGMPは、ホストとルーター間でマルチキャストグループのメンバーシップ情報を交換するために使用されます。ホストが特定のグループに参加したい場合、IGMPメンバーシップレポートを送信します。ルーターは、定期的にIGMPクエリを送信し、アクティブなメンバーシップを確認します。このプロセスを通じて、ネットワークは効率的にマルチキャストトラフィックを配信できます。
要素 | 説明 | プロトコル |
---|---|---|
グループ参加 | ホストがグループに参加 | IGMP |
グループ離脱 | ホストがグループから離脱 | IGMP |
メンバーシップ確認 | ルーターがメンバー確認 | IGMPクエリ |
効率的な配信 | 必要なホストのみに配信 | IPマルチキャスト |
マルチキャストルーティング
マルチキャストルーティングは、マルチキャストトラフィックを効率的に宛先グループに配信するための経路を決定するプロセスです。ユニキャストルーティングとは異なり、マルチキャストルーティングは、複数の宛先に同時にデータを送信するために、特別なアルゴリズムを使用します。PIM(Protocol Independent Multicast)などのルーティングプロトコルが一般的に使用されます。
PIMは、既存のユニキャストルーティングプロトコルを利用して、マルチキャストトラフィックの配信経路を構築します。PIMには、Dense Mode(PIM-DM)とSparse Mode(PIM-SM)の2つの主要なモードがあります。PIM-DMは、ネットワーク全体にトラフィックをフラッディングし、不要なトラフィックをプルーニングするアプローチを取ります。一方、PIM-SMは、共有ツリーを構築し、必要な場合にのみトラフィックを転送します。
ルーティング | 説明 | モード |
---|---|---|
PIM-DM | フラッディングとプルーニング | Dense Mode |
PIM-SM | 共有ツリーを構築 | Sparse Mode |
効率的な経路 | 最適な配信経路を決定 | マルチキャスト |
ユニキャスト利用 | 既存プロトコルを活用 | PIM |