
目次
記事の要約
- SteelWatch Stichtingが日本製鉄の気候変動対策を検証した報告書を公開
- 2040年までの本格的な排出量削減が見込めない現状を指摘
- 石炭依存からの脱却と再生可能エネルギーへの投資を提言
日本製鉄 気候変動対策の検証 2025
SteelWatch Stichtingは2025年5月8日、日本製鉄の気候変動対策実績を評価する報告書『日本製鉄 気候変動対策の検証 2025』を公開した。この報告書では、日本製鉄の現在のロードマップでは2040年までの間に本格的な排出量削減が行われず、低排出な製鉄に対する投資の遅れが事業リスクと気候リスクを生み出していることが明らかになったのだ。
報告書によると、日本製鉄は年間2500万トンの石炭を消費し、年間合計生産能力6900万トンの炭鉱に投資している。さらに豪州ブラックウォーター炭鉱の権益の20%取得により1000万トン追加され、同社の総石炭生産能力は石炭専門企業であるBHP三菱アライアンスの6000万トンを上回るという。日本製鉄の現行の2030年排出削減目標である30%削減(2013年比)は、日本の目標を大幅に下回っており、気候変動対策として不十分であると指摘されている。
報告書は、日本製鉄が国際的に競争力を維持しながらニア・ゼロエミッションの製鉄を追求する多くの機会を有するにもかかわらず、時代遅れな石炭を使用する製鉄から脱却できていないと結論付けている。オーストラリアやカナダなど再生可能エネルギーが豊富な地域のグリーンアイアンサプライチェーンへの投資が、石炭に代わる大きな可能性として挙げられているのだ。
日本製鉄の気候変動対策に関する詳細
項目 | 詳細 |
---|---|
報告書発表日 | 2025年5月8日 |
発表団体 | SteelWatch Stichting |
報告書名 | 日本製鉄 気候変動対策の検証 2025 |
日本製鉄の石炭消費量 | 年間2500万トン |
日本製鉄の炭鉱投資能力 | 年間合計生産能力6900万トン |
2030年排出削減目標 | 30%削減(2013年比) |
日本の2035年排出削減目標 | 60%削減 |
日本の2040年排出削減目標 | 73%削減 |
Super COURSE50の排出削減率 | 50%(2040年代と予想) |
石炭からの脱却と再生可能エネルギー
日本製鉄は、石炭を使用する生産拠点での排出を部分的に削減させる技術に重点を置いている。しかし、オーストラリアの炭鉱への投資を拡大させ、高炉生産の延長を約束するなど、石炭事業が中心であるかのように振る舞っているのだ。
- 再生可能エネルギーの活用
- グリーンアイアンサプライチェーンへの投資
- 低排出技術の導入拡大
報告書は、日本製鉄の脱炭素ロードマップが1.5度目標に整合させ、石炭を使用する製鉄からの完全脱却に向けた変革に乗り出さない限り、気候変動対策として意味を持たないと指摘している。
日本製鉄の気候変動対策に関する考察
本報告書で指摘された日本製鉄の気候変動対策の遅れは、投資家の懸念を高め、企業価値の低下につながる可能性がある。現状維持では、国際的な競争力を失い、持続可能な事業運営が困難になるだろう。そのため、早急な対策が必要不可欠だ。
今後、日本製鉄が具体的な脱炭素化計画を示し、再生可能エネルギーへの投資を加速させることが重要となる。同時に、株主や社会からの圧力も強まることが予想されるため、透明性のある情報開示と積極的なコミュニケーションが求められるだろう。これらの取り組みが、日本製鉄の将来を左右する鍵となるのだ。
さらに、政府による政策支援や技術革新の促進も不可欠である。再生可能エネルギーの導入促進や低炭素技術開発への投資拡大など、官民一体となった取り組みが求められる。日本製鉄の取り組みは、日本の産業全体の脱炭素化に向けた取り組みの指標となるだろう。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「『日本製鉄 気候変動対策の検証 2025』を公表 | SteelWatch Stichtingのプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000124637.html, (参照 2025-05-08).