
目次
記事の要約
- Quemixと本田技術研究所が量子状態を読み出す新技術を共同開発
- 世界初となる量子コンピュータ実機を用いたXAFS計算に成功
- 量子コンピュータのシミュレーション領域における課題解決に貢献
Quemixと本田技術研究所の共同研究成果
Quemixと本田技研工業株式会社本田技術研究所は、2025年5月14日、量子化学計算分野における共同研究の成果を発表した。この共同研究では、量子コンピュータを用いたシミュレーションに必要な「量子状態を読み出す新技術」の開発に成功したのだ。
さらに、X線吸収微細構造(XAFS)計算を量子コンピュータ実機上で実行することに成功しており、材料開発への応用が期待される。Quantinuum社製量子コンピュータと東京大学物性研スーパーコンピュータのハイブリッドシステムを活用し、問題をそれぞれのコンピュータの特性に合わせて分割して計算を実行した点が特徴だ。
この成果は、量子コンピュータ実機を使用した論理ビット上での材料開発に活用できる計算として世界初と発表されており、FTQCの実用化時代をリードする先進的なユースケースとなっている。5月16日には、量子コンピュータのビジネスイベント「Q2B 2025 Tokyo」にて研究成果を発表するセッションが予定されている。
共同研究の概要と成果
項目 | 詳細 |
---|---|
共同研究開始日 | 2025年5月時点 |
研究内容 | 量子化学計算分野における量子コンピュータ活用 |
開発技術 | 量子状態を読み出す新技術 |
計算対象 | X線吸収微細構造(XAFS)計算 |
使用機器 | Quantinuum社製量子テクノロジー、東京大学物性研スーパーコンピュータ |
成果 | 世界初となる量子コンピュータ実機を用いた論理ビット上での材料開発計算 |
発表イベント | Q2B 2025 Tokyo (5月15日~16日、グランドハイアット東京) |
量子状態読み出し技術について
従来の量子状態読み出し技術では、量子状態を読み出す際に「波束の収縮」が発生し、量子状態が壊れてしまうという課題があった。膨大な計算コストも必要だったのだ。
- 量子状態を壊さずに特徴量をスキャン
- 高速で効率的な量子状態読み出しを実現
- 量子コンピュータを用いたあらゆるシミュレーションへの適用可能
今回開発された新技術は、量子状態を壊すことなく特徴量をスキャンすることで、高速かつ効率的な量子状態読み出しを実現した。この技術は量子化学計算だけでなく、様々なシミュレーションに適用可能であり、量子コンピュータの利活用を大きく促進する可能性を秘めている。
量子コンピュータ実機を用いたXAFS計算に関する考察
今回の共同研究で達成された量子コンピュータ実機を用いたXAFS計算は、材料開発プロセスを大幅に効率化できる可能性を秘めている。スーパーコンピュータによる前処理と量子コンピュータによる高精度計算を組み合わせることで、従来よりも高速に計算を実行できるようになったのだ。
しかし、量子コンピュータの計算能力には限界があり、シミュレーションサイズが大きくなると計算時間が増加する可能性がある。そのため、量子アルゴリズムの更なる改良や、より高性能な量子コンピュータの開発が今後の課題となるだろう。また、実験データとの比較検証を継続的に行い、計算精度の向上を図る必要がある。
将来的には、この技術を用いて、実験だけでは捉えにくい微視的な構造変化や反応メカニズムの解明、さらには新材料の設計などへの応用が期待される。量子コンピュータの更なる発展と、この技術の普及によって、材料開発のスピードと精度の向上に大きく貢献できるだろう。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「QuemixとHondaが「量子状態を読み出す新技術」を共同開発し、世界初の量子コンピュータ実機を用いた計算に成功 | 株式会社テラスカイのプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000195.000009955.html, (参照 2025-05-15).