
目次
記事の要約
- 鹿児島県薩摩川内市で医療MaaSの運用開始
- 甑島における医療アクセス向上を目指す
- 離島医療の課題解決に貢献
薩摩川内市における医療MaaS運用開始
一般社団法人鹿児島地域医療介護ネットワークと株式会社パシフィックメディカルは、2025年4月30日、鹿児島県薩摩川内市における「マルチ医療DX事業」の一環として、有人離島である甑島での医療MaaSの運用を開始したと発表した。この取り組みは、島内の医療体制の不足や診療科の偏在といった課題の解消を目指しているのだ。
医療MaaS車両の運行により、島内の診療所に勤務する医師の出張診療所への巡回診療を支援する。出張診療所ごとの建物や医療機器などの維持・メンテナンスにかかる費用や手間を削減できるだけでなく、診療所へ移動することが困難な患者の自宅付近での診療も可能になる。車両にはバイタル機器等を搭載し、オンライン診療時には医師の指示のもと看護師等が患者への一部の処置を実施できる体制も整っているのだ。
さらに、離島医療における診療科の偏在という課題にも対応する。甑島の診療所は本土の専門クリニックや総合病院と連携して診察を行っており、医療MaaS車両を活用することで、本土の医療機関での受診サポートも可能となる。慢性疾患などで定期的に薩摩川内市内の本土の医療機関へ通院している患者にとって、大きな利便性向上につながるだろう。
今回の医療MaaS導入は、地域医療情報連携ネットワーク「かごネット」と連携して行われる。かごネットは、地域の病院、診療所、歯科、調剤薬局、介護事業所、消防署等の140施設が参加し、患者の医療情報を共有・参照することで、適切で効率的な医療提供を実現している。この連携により、医療MaaS車両での診療情報も共有され、より包括的な医療体制が構築されるのだ。
マルチ医療DX事業と医療MaaS
事業名 | 内容 |
---|---|
マルチ医療DX事業 | 薩摩川内市が推進、デジタル田園都市国家構想交付金を活用 |
医療MaaS | 甑島での運用開始、医療アクセス向上を目指す |
かごネット | 地域医療情報連携ネットワーク、140施設が参加 |
かごマイカルテ | 市民向け健康アプリ、バイタル情報登録・管理など |
MINET | パシフィックメディカル提供のクラウド型医療・介護連携システム |
医療MaaSについて
医療MaaSとは、MaaS(Mobility as a Service)の概念を医療分野に応用したもので、交通手段だけでなく、医療サービスの提供場所や手段を柔軟に選択できるサービスだ。今回の甑島での導入では、移動手段の確保だけでなく、オンライン診療や遠隔医療の支援、医療機器の搭載など、多様な機能が統合されている。
- 医師の巡回診療支援
- 自宅付近での診療の提供
- 本土医療機関との連携強化
これにより、離島特有の医療アクセス問題の解決に大きく貢献するだろう。
甑島における医療MaaS運用に関する考察
甑島における医療MaaSの運用開始は、離島医療の課題解決に向けた大きな一歩となるだろう。高齢化や過疎化が進む離島において、医療アクセス向上は喫緊の課題であり、医療MaaSは、その解決策の一つとして期待されている。しかし、通信環境や医療機器のメンテナンス、人材確保など、課題も残るだろう。
今後、起こりうる問題としては、通信障害によるオンライン診療の中断や、医療機器の故障などが考えられる。これらの問題に対しては、予備機器の配備や通信回線の強化、定期的なメンテナンスの実施などが有効な対策となるだろう。また、医療MaaS車両の運用には、熟練した看護師などの専門人材が必要となるため、人材育成や確保も重要な課題となるのだ。
今後追加してほしい機能としては、多言語対応や、より詳細な患者のバイタルデータの収集・分析機能などが考えられる。また、AIを活用した診断支援システムの導入も期待できる。これらの機能強化により、医療MaaSの利便性と有効性がさらに高まり、離島住民の健康増進に貢献するだろう。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「鹿児島地域医療介護ネットワークとパシフィックメディカル、 薩摩川内市における「マルチ医療DX事業」において離島の医療アクセス向上を目指し、甑島での医療MaaSの運用を開始 | 株式会社パシフィックメディカルのプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000076432.html, (参照 2025-05-02).