
目次
記事の要約
- 日本総研が生成AI向けパーソナルデータ漏洩抑制技術に関する論文を発表
- ゼロ知識証明を活用し、プライバシー保護とデータ活用を両立
- 金融・医療分野でのデータ活用に期待
日本総研が生成AI向けパーソナルデータ漏洩リスク抑制技術に関する論文を発表
株式会社日本総合研究所は、パーソナルデータを保管する組織と活用する組織が異なる場合でもLLMサービスを安全に提供できる技術に関する論文が、ウェブ・データマイニング分野で権威ある国際学会「The Web Conference 2025」に採択されたことを2025年4月25日に発表した。この技術は、生成AIの利用拡大に伴うパーソナルデータ漏洩リスクの抑制に貢献することが期待される。
本論文「Generating Privacy-Preserving Personalized Advice with Zero-Knowledge Proofs and LLMs」は、日本総研・先端技術ラボの渡邊大喜・打越元信によって執筆された。2025年4月28日から5月2日にオーストラリア・シドニーで開催されるWWW 2025で発表される予定だ。
この研究は、LLMを活用した生成AIによるパーソナライズされたアドバイスの提供において、パーソナルデータの収集に伴うデータ漏洩リスクを低減することを目的としている。ゼロ知識証明というプライバシー保護技術を用いることで、機微なデータを開示せずにデータの加工や最小化のプロセスが正しい手順で行われたことを証明できる。
本論文の概要
項目 | 詳細 |
---|---|
手法 | パーソナルデータから抽象度の高い「個人の特性」を推論し、その結果のみをLLMサービスに送信 |
技術 | ゼロ知識証明技術を用いて推論結果を算出し、詳細なパーソナルデータを保護 |
成果 | ゼロ知識証明を実用的な性能で適用できることを実証 |
活用 | パーソナルデータを保護しながら、個人に合わせたLLMサービスを安全に提供 |
ゼロ知識証明について
ゼロ知識証明とは、ある命題が真であることを、その内容に関する一切の情報を相手に伝えることなく証明する暗号技術のことを指す。証明者は、自分が真実を知っていることを相手に納得させるだけで、その知識自体は開示しない。
この技術は、暗号資産などのブロックチェーン分野での採用が進んでいるが、一般的なユースケースでの実用可能性はまだ十分には検証されていない状況にある。日本総研の本論文は、この技術の新たな可能性を示すものとして注目される。
生成AI向けパーソナルデータ漏洩リスク抑制技術に関する考察
日本総研が発表した生成AI向けパーソナルデータ漏洩リスク抑制技術は、プライバシー保護とデータ活用の両立を目指す上で非常に重要な一歩だ。特に金融や医療といった機微な個人情報を扱う分野での応用が期待され、データ漏洩のリスクを抑えつつ、よりパーソナライズされたサービスの提供が可能になるだろう。
しかし、ゼロ知識証明の実用的な性能を維持しつつ、多様なデータ形式や複雑な推論処理に対応できるかという課題も残る。今後は、さまざまなユースケースにおける検証を通じて、技術の成熟度を高めていく必要があるだろう。
また、この技術が普及するためには、開発者や企業が容易に導入できるような標準化されたAPIやツールキットの提供が不可欠だ。さらに、プライバシー保護に関する法規制や倫理的なガイドラインの整備も、技術の健全な発展を支える上で重要な要素となるだろう。
参考サイト/関連サイト
- PR TIMES.「生成AI向けパーソナルデータの漏洩リスクを抑制する技術に関する主著論文が「The Web Conference 2025」にて採択 | 株式会社日本総合研究所のプレスリリース」.https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000126.000068011.html, (参照 2025-04-28).